佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

オプションの基礎(1)そもそもオプションとは何か

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この「オプションの基礎」シリーズは、幣著「実務家のためのオプション取引入門」の第1章からの抜粋になっております。 オプションのプライシングや取引戦術など、オプションについてより本格的に学びたい方はぜひご一読をお勧めします。

オプションについて書かれた日本語の良書は全然無いのが実情です。手前みそになってしまいますが、真面目にオプションについて学びたい方にとっては幣著がベストだと思います。

某ECサイトレビューでは難しいとお叱りを受けておりますが、そこは私の力不足だと反省しております。。。

もともとオプション自体簡単ではないのですが、はじめのとっかかりとしてこのシリーズがお役に立てればと思っております。

 

 

オプションとは何か

そもそもオプションとはどういう商品なのでしょうか。オプション取引にはどのようなメリットがあるのでしょう。また、オプションはどのようにして取引できるのでしょうか。まずは、このようなオプションに関する基本的な事柄を見ていきましょう。 

オプションとは「特定の原資産を決められた価格で、一定の期間内で売買する権利」のことを言います。そしてそのオプションは、下記のような項目によって規定されます。

原資産

その権利行使の対象となる資産のことで、株式、コモディティ、為替、債券やそれらの指数、先物などが原資産となります。

コール・プット

原資産を買う権利をコール(Call)、売る権利のことをプット(Put)と呼びます。

満期日

権利を行使できる期限です。

タイプ

オプションには、大きく分けてアメリカン型とヨーロピアン型の2つのタイプがあります*1

アメリカン型は、満期日までならばいつでも権利を行使できます。ヨーロピアン型は、満期日のみに権利が行使できるオプションです。これらの通常のオプションを総称して、ヴァニラオプション(Vanilla Option) と呼びます。ヴァニラとは、「普通の、ありふれた」といった意味です。また本書では解説しませんが、デジタルオプション(Digital option)やルックバックオプション(Look-back option) などの特殊なオプションも存在します。これらはヴァニラオプションに対してエキゾチックオプション(Exotic option) と呼ばれます。エキゾチックとは、「一風変わった」という意味です。ほとんどのマーケットにおいて、株式オプションはアメリカン型ですが、いくつか例外もあります。実は東京証券取引所で上場されている株式オプションはその例外のひとつで、ヨーロピアン型です。

行使価格

権利を行使し、売買を執り行う価格のことです。

決済タイプ

現物決済と差金決済に分けることができます。通常、株式オプションは現物決済であり、権利の行使は株式の売買を伴います*2。日経225のような指数オプションの場合は、満期日における決済価格と行使価格の差額に相当する現金の授受が行われます。このようなものを差金決済と言います。

コントラクトサイズ(Contract Size)

オプションひとつに対して、権利のおよぶ対象原資産の数量のことをコントラクトサイズといいます。シェアズパーコントラクト(Shares per Contract)とも言います。

例えば、アメリカの証券取引所でトレードされている株式オプションのコントラクトサイズは通常100です。すなわちコールをひとつ買う場合、それは株式100株を買う権利を購入することになります。東証の株式オプションは、銘柄毎にコントラクトサイズが異なるので注意が必要です。例えばトヨタ株(7203 JP) は100、ドコモ株(9437 JP) は1となっています。これらは株式の売買単位と等しく設定されています。

マルティプライア(Multiplier)

オプションひとつに対して、権利のおよぶ対象原資産が100株であれば、支払うキャッシュも100株分でなくてはなりません。

例えば、コールをひとつ買った場合、それは株式100株を買う権利を購入したのですから、実際にはオプションの取引価格に100を掛けた額を支払わなくてはなりません。これをマルティプライアと言います。当然、マルティプライアとコントラクトサイズは等しく、この場合は100となります。

例えば、行使価格が90ドルのコールをひとつ3ドルで買った場合、それは正確に言えば

(行使価格) x (マルティプライア) : 90 x 100 = 9,000ドル

を支払って100(コントラクトサイズ)の株式を得る権利を

(取引価格) x (マルティプライア) : 3 x 100 = 300ドル

のキャッシュを支払って購入したことになります*3

さきほど述べたように、マルティプライアとコントラクトサイズは通常等しいのですが、本来は全く異なる概念です。実際、株価の変動を伴う株式の分割や合併などの企業のコーポレートアクション(Corporate Action)が実施され、既存オプションの内容が変更される場合、コントラクトサイズとマルティプライアは異なる値をとることがあります。しかし、そのような場合を除き、コントラクトサイズとマルティプライアはほぼ同義のように用いられます。

 

 

通常、オプションを指定するときに上記すべての項目を口に出して言うことはありません。トレーダーは慣例的に「原資産、満期日の月(限月)、行使価格、コール・プット」の形式でオプションを指定します。例えば、「Google Apr(4 月) 1,000 コール」と言うとそれはどのようなオプションのことでしょうか。アメリカの証券取引所で取引されている株式オプションは、通常アメリカン型でコントラクトサイズは100であり、毎月第3金曜日に満期日を迎えます*4

つまり上記のオプションは4月の第3金曜日までにGoogle株を1株1,000ドルで100株購入する権利のことを指します。さきほどのオプションを10個買えば、それは「Google Apr(4月) 600 コール」を10個「ロング」したことになります。

 

次回は、オプション取引の仕方について見ていきましょう。

 

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*1:他にバミューダ型(Bermudan type)があります。これは、アメリカン型とヨーロピアン型の中間のタイプで、満期までの指定された日に権利行使が可能です。

*2:例えば、インドの株式オプションはヨーロピアン型で差金決済です。つまり株式の売買は伴いません。

*3:ここで、(行使価格) x (マルティプライア)を特にコンシダレーション(Consideration)と言い、代わりに得る資産をデリバラブル(Deliverable)と言います。この場合は100株がデリバラブルとなります。広義には、オプションはコンシダレーションとデリバラブルを交換する権利だと言っても良いでしょう。

*4:以前は、第3金曜日に満期を迎える月次オプションだけしか存在しなかったのですが、近年では、原資産によっては、毎週金曜日に満期を迎えるウィークリー・オプションも活発に取引されています。また、金曜に限らず、月曜や水曜に満期を迎えるオプションの取引も増えてきています。